※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。

このマガジンは「畑のそばに生きる様々な人」と「その暮らし」の紹介を通じて、皆さんと一緒に生き方の選択肢を再発掘していくメディアです。

5歳と2歳の、ふたりのお子さんがいる田山ゆきさん。ITベンチャー、農業関連ベンチャー、農園という3つに所属するトリプルワーカーでもあります。

「農園で働くことは、私にとって大切なことです」とうれしそうに話す田山さんですが、どうして農園を職場に選んだのでしょうか?

「週2ファーマー」という働きかたについて伺いました。

思いっきり働けるのは嬉しい!

ハタケト 現在のご職業について教えてください。

田山さん 千葉県の森田農園で週2日、地元のITベンチャーで週2日、フルリモートで農業ベンチャーで週2日の仕事をしています。農園では農作物の収穫や出荷作業のほかに、マルシェの出店、ホームページ制作など色々なかたちで関わっています。ITベンチャーと農業ベンチャーではWEB運用とライターをしています。

この働き方になってまだ5ヶ月目なので、まだ調整中という感じではあります。以前は下の子が家にいる状態でしたが、この4月から保育園に入園できたので思いきり働けることが嬉しくて、ちょっと詰め込みすぎた感もあるかも(笑)

ただ、週6日すべてがフルタイムではないんです。金曜の午前は必ず予定を空けていたり、子どもが体調を崩した時は在宅に切り替えるなど、わたしの都合に合わせてもらえてるので理解ある会社で本当にありがたいです。

ハタケト 農園にご出勤される日は、お子さんの通園などどうされてますか。

田山さん 畑に行く日の朝は、夫が子どもの支度をしています。夫は千葉から都内へ出勤するので帰りは遅いのですが朝の時間は子どもと過ごせるようにしてくれています。通園の道のりも夫は「楽しい」と言ってくれていますし、畑の出勤が土曜の日は終日夫に任せています。もともと私のやりたいことを応援してくれる人ではあるのですが、畑がきっかけになったら結果的に夫が子どもと関わる時間が増えたのはよかったと思ってます。

畑で働くと、自分に「いい余白」ができるんです

ハタケト 週2ファーマーについてもう少し具体的に教えてほしいのですが、農園ではどんなお仕事をされてるんでしょうか。

田山さん 基本的には、お野菜の収穫、梱包、出荷です。あとマルシェに出店するときの出店管理や、ホームページも担当しています。もともとWeb製作に興味があったので、園主に相談したら挑戦させてもらえることになりました。わたし自身も勉強しながら、時間をかけて納得感のある仕事をさせてもらえてます。

園主がやりたいことが色々ある人なので、すべてに手が回っていないときもあるみたいなんです。わたしがお手伝いすることで、それらを具体的なアクションに変えられるようにと思っています。いろんな関わり方をさせてもらえていつもワクワクしながら働かさせてもらっています。

また、農園で働くようになってからは、精神的に「いい余白」ができました。作業中、「無」になる時があるんですが、そういう時間を意図的につくるのは、なかなか難しいことですよね。でも無になる時間は本当にマインドフルで、自分のことに目を向ける時間だと実感しています。

あと、旬の野菜を食べる機会が増えたこともあって、子どもが野菜好きになりましたね。「ママが採ったキュウリなんだよ」とか話しながら食べることも増えたので「畑に行きたい!」と言ってくれます。農園のお仕事は、お給料だけではない価値があると、日々の暮らしの中で感じています。

育児休暇から復職、つらかったオフィスワーク

森田農園にて、代表の森田さんと一緒に

ハタケト 田山さんはどうして週2ファーマーを始められて、そして現在のトリプルワーカーになられたのでしょうか。

田山さん 勤めている農業関連ベンチャー企業の取材で以前にも、森田農園に来たことがありました。自宅からも近いし、なんとなく「もっと応援したいな」とは思っていたんです。でもそのときは週2で勤めるという発想には至らずにいました。

その頃すでにTUMMYの阿部ちゃんとはオンラインサロンの「農ブラ部」を通して繋がっていましたが、ある日ツイッターで「週1ファーマーやっています」と発信しているのを見て、「そっか!週1で畑仕事もアリなんだ!」と衝撃を受けたんです。しかもその後、偶然にも森田農園さんが求人を出してて「週1でも受け入れOK」と書いてあるのをみてご連絡しました。

今思うと、ちょうど自分にあった働き方を探したい気持ちが強くなってきたときに、阿部ちゃんから気づきをもらえたのがありがたかったですね。

ひとりの子を産んだ後に、丸2年間の育休をとってから復職したんですが、流山市から都内までの通勤は本当に負担になってしまったんです。わたしはどちらかというと「時間をかけて営業したいタイプ」なのですが、どうしても育児と両立すると思ったように仕事に時間がかけられず、営業成績も伴わなくなっていました。精神的にもきつくなったときにふたり目の妊娠がわかったので思い切って退職しました。妊婦を雇ってくれる会社はないので、転職せずにライター講座に通い、しばらくはフリーランスでやっていくことにしたんです。

あのとき思い切ってフリーランスになってみた期間があったからこそ「自分に合った働きかた」を自分で設計しようという意識に繋がったんだと思います。今はもう週5で通勤しながらデスクワークなんて、自分にはできる気がしません(笑)

働きたいママの選択肢はもっとあることを伝えたい

ハタケト 職場が3つあって、うち1つは畑。とてもレアな働き方をされている田山さんですが、今度さらにやりたいことはありますか。

田山さん 「ママたちの選択肢を増やしたい」とはずっと強く思っています。フリーランス、そのあと週2ファーマーを始めてみて、本当にいろんな働きかたの選択肢があることを実感しています。誰にでも可能性はたくさんあるのに、ママになったことで働くことを諦めている人も多いんですよね。私も会社員しか選択肢を知らなかった頃は今のように仕事ができると思ってなかったと思うんです。

もちろん様々な農園があるので、畑での働きかたも色々だと思うのですが、畑って、関わり方も色々できる職場だと思います。裏方として整えるのを手伝うような仕事もあれば、マルシェの出店では接客の経験やスキルが活かせる。それと、さっき話したように、子どもがいる家庭としては、野菜がもらえるのもすごくいいポイントですよね!

ハタケト ママたちに働きかたの選択肢が伝わっていないのはどうしてだと思いますか。

田山さん 働くなら週5できっちり、と思いがちなことでしょうか。例えば、保育園を探してる時も同じで、周りにあわせて「0歳で預けなきゃ」と切羽詰まって考えていました。別にいつ預けるのもその人次第で全然いいはずなのに。

仕事と育児の両立がしんどくて会社を辞める、そのあとの働き先を見つけられない、もう諦める、という人が多いのはもったいないと思います。働き方の選択肢は、本当に多様なんだということをとにかく伝えたいです。個性ある働き方でもいい、というポジティブなことをゆくゆくはママたちに向けて発信していきたいです。

(田山さんへのインタビューはここまで)

育児中の女性にとって「農園」は魅力的な勤め先のひとつだと自ら示してくれる田山さん。彼女の勤め先である「森田農園」さんとは、一体どんな農園なのでしょうか。 

そこで今度は、田山さんと一緒に森田農園にお邪魔し、園主の森田さんにお話をお伺います。

どうぞお楽しみに!

ライター/あべなるみ 編集/やなぎさわ まどか

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INFORMATION

田山 ゆき

田山 ゆき

千葉県流山市在住。ITベンチャー、農業関連ベンチャー、農園という3つに所属するトリプルワーカー。2児の母。園のお迎えが最後のOLから、思いきってフリーランスに転身。プラスで週2で農園ワークを開始。現在、農園で着られる「可愛い」作業服ブランド作成に挑戦中。