aiyueyoは、食や農業に関心をもち、仕事と暮らしをまるっと愛せるような生き方をしたい方々と手を取りあって歩んでいます。
「暮らしも仕事も抱きしめて」連載では、心地良い、仕事と暮らしのあり方やバランスを選びとってごきげんに生きている方たち(愛ワーカーさん)にお話を聞き、ご自身が理想として掲げている働き方・暮らし方の背景や、大切にしている価値観をご紹介します。

自分が先頭に立って周りを引っ張っていくよりも、誰かのやりたいことや夢をかたちにするサポートの方が喜びだと感じる、そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、「好き」や「応援したい」の気持ちを原動力にしている「ゆっちさん」こと、よこいゆかさんです。東京で生まれ育ち、多拠点生活を経て、2016年からは大分県中津市在住。夫と愛犬マルくんと一緒に暮らしています。

また現在は、ハタケトを運営するTUMMY株式会社にて、想いの芽を育てるコミュニティ「ナエドコ」の事業責任者である他、マーケティングスクールの事務局をしたり、地域のカフェでアルバイトをしたりと、複数の仕事に取り組むパラレルワーカー(ひとつの企業に所属・依存するのではなく、複数の仕事やキャリアをもって働く人)です。

「愛ある暮らしが広がる未来を、ハタケトやナエドコに集う仲間と一緒に作っていきたい」と言うゆっちさんに、ご自身の仕事観やこれまでの歩みを伺いました。

仕事のいちばんの選択基準は「ひと」

ゆっちさんの今の仕事について教えてください。

ゆっちさん:2021年に始まったハタケト発のコミュニティ「ナエドコ」の事業責任者として、講座のファシリテーターやコミュニティマネージャーを務めています。きっかけは自分自身がナエドコ0期に参加したことでした。目指したい未来のあり方が近い仲間と共に歩む喜びや、自分の想いの根っこを探る楽しさを知って、世界が大きく広がったんです。このときの感動から「ナエドコの場をつくり、輪を広げる役割を担いたい」と思いました。

TUMMYを運営するべーちゃん(あべなるみさんの愛称)の「食と農の領域で仕事と暮らしのバランスをとりながら働ける300人分のなりわいを5年で作りたい」という目標にも大きく共感しました。愛が循環して、みんなの心がやさしさで満たされるような世界を広げたいと思って、自分からべーちゃんにナエドコの運営を手伝いたいと相談したんです。

ナエドコの他には、マーケティングスクールの事務局、地域のカフェでのアルバイト、その他プロジェクト単位で携わっている仕事もあって、今は複数の仕事に取り組む働き方をしています。

これまではどのようなお仕事をされていたのですか。

ゆっちさん:新卒で東京の求人広告の会社に就職しました。1年ちょっと経った時期にリーマンショックをきっかけに会社を辞めて、当時はまだ珍しかったフリーランスになったんです。コーチングスクールの運営、キャンプなどアウトドアのベンチャー企業、バームクーヘン屋さん、美容系Webメディアのライターや編集、ドライフラワー屋さんや間借りカフェの立ち上げ、キャンプ場「バルンバルンの森」、といろいろなプロジェクトに関わってきました。ほとんどが代表の方が魅力的で、その人と一緒に働きたいと思った会社や、友人や知人から声を掛けられて、力になりたい、やってみたい、と思った仕事です。

(今回の取材場所は、ゆっちさんが昨年まで関わっていたキャンプ場「バルンバルンの森」でした。仕事として関わらなくなっても変わらず応援したい、大切な場所のひとつなのだそう)

人との出会いをきっかけに、さまざまなジャンルのお仕事をされてこられたのですね。

ゆっちさん:業務内容や働く場所よりも、人の要素がいちばん大きかったです。この人の近くにいたい、この人と一緒に働きたい、と思ったら、自分がお役に立てる役割を探して、関わりしろをつくるようにしてきました。

そうして働く中で何か転機が訪れたり、そのプロジェクトでの自分の役割が一段落ついたと感じたら手放す。次に余白が生まれると、また新たな出会いがやってくるんです。結果的に、1年ほどで新しい環境に身を置くことが多かったですね。

今までやってきた仕事を辞めることや、新たな環境に飛び込むのは勇気がいることだと思うのですが、不安や懸念はありませんでしたか?

ゆっちさん:わたしはひとつひとつが実験だと思っているので、大きな不安はありませんでした。やってみて、違和感があったら、その感覚の根っこを探って、自分にとって何が大切なのかを見極めて、そして新しいことをまた試してみる。これを積み重ねてきた感覚です。自分に合うかな?できるかな?とあれこれ考えて思い悩むより、実際にやってみるほうが分かることが多いと思っています。ナエドコの運営業務も、最初はべーちゃんに「1ヶ月間無給でも良いから、まず一緒に働いてみたい」とお願いしたくらい。悩むよりも、まずはやってみたいんです。

(「はじめはインターンみたいに小さく始めたTUMMYの仕事も、今では私の中でとても大きな存在です」とゆっちさん)

自分にとって本当に大切なことを見つめ直す

これまでのお仕事の中で、特に大きな人生の転機となったできごとを教えてください。

ゆっちさん:たくさんあって選ぶのが難しいのですが、ひとつ挙げるとしたら、バームクーヘン屋さんで働いていたときのことです。初めのうちは商品が売れれば売れるほど、お客様も働く仲間もみんながハッピーになる様子に自分自身もわくわくしながら働いていたのですが、お店が有名になるにつれて生産体制に無理が生じてしまい、いちばん大事にしたい一緒に働いている仲間たちが疲弊していく様子を目の当たりにしました。次第にその状況に心が追いつかなくなってしまい、ある日、接客をしているときに「いらっしゃいませ」が言えなくなってしまったんです。

心身共に不調な状態が続き、両親や友人たちが心配している様子を見て、わたしはいちばん笑顔にしたい人たちをなぜ悲しませているのだろう、と思いました。いちばん笑顔にしたい人たちを笑顔にするためにはわたし自身が元気でいることが必要だと気づいたんです。仕事をする上で何かしらの成果を出すことも大切だけど、わたしはわたしが元気でいることを、わたしのいちばんの仕事にする、と決めました。この頃から意識的に、毎日ご機嫌でいることを大事にしています。

ゆっちさん:それと、色んな仕事に取り組んできた行動の軸には、「好き!」「おもしろそう!」「応援したい!」の気持ちに加えて、人生をかけてやりたいと思えることを見つけたいという気持ちもありました。幼少期からずっと、どうしてもやりたいと思える職業や仕事がなかなか見つからなくて悩んでいたんです。

今は、どんなことが「違う」のかが分かる経験を重ねて、わたしにとっては「何をするか」よりも「誰とするか」の方が大切なんだ、と感じ始めました。無理にやりたいことを見つけようとするのではなく、誰と一緒に未来を作っていきたいかにフォーカスするほうが性に合っていると分かり、心が軽くなりましたね。

(20代の頃は、人生のロールモデルを探してたくさんの人と会って話を聞く日々を過ごしたことも。東京ではしっくりくる人と出会えなかったけれど、地方では素敵だなと思う大人に出会うことがぐんと増えたそう)

みんなの夢に便乗しながら生きる

ゆっちさんにとって、仕事はどのような存在ですか。

ゆっちさん:好きな人たちと一緒にいるためのいちばんの方法だと思っています。わたし自身は、これを成し遂げたいという絶対的な夢はなくて、好きな人たちと共に時間を過ごしながら楽しく暮らし続けられたらいいなと思っているんです。好きな人たちと一緒に過ごす手段として、ランチに行ったりお茶しに行ったりするのもいいけれど、仕事だともっとコンスタントに接点がもてますよね。好きな人たちの夢を「応援」することで便乗して一緒に働くことは、好きな人たちと一緒にいるための最高の言い訳だと感じています。

応援には、外部からコンサルのような立ち位置で関わるやり方と、内部に入って一緒に動くやり方があると捉えているのですが、わたしは後者のような、一緒に汗水を流して、一緒に喜べるような関係性でありたいです。

誰かを応援することを軸にしていると、ご自身のことが後回しになることもあるのではないかと想像したのですが、応援と自分を満たすことはどう両立させていますか。

ゆっちさん:好きな人たちと一緒にいたい、という自分の想いが起点なので、応援は自分を満たすことにもつながっています。毎日ご機嫌でいることを大事にしていることもあって、今は自分をすり減らして疲れることはほとんどありません。

以前、美容系Webメディアのライターをしていたときは、大量生産、大量消費の世界に違和感があるのに、流行を追いかけ続けなくてはならず、がんばればがんばるほどわたしが心地よいと思う世界からどんどん離れていく状況に、モヤモヤが募っていく経験もしました。

今関わっていることはどれもわたしが共感する取り組みばかりなので、仕事が目指したい未来につながっているという実感があり、働くことで得られる喜びを日々感じています

目の前の人たちと丁寧に向き合い、愛あるつながりを育んでいく

ゆっちさんが目指したい未来像をお聞きしたいです。

ゆっちさん:ナエドコのあたたかなつながりの輪を参加者さんたちと一緒に広げて、夢ややりたいことを表現しやすい世界をつくりたいと思っています。ナエドコは「やってみたい」という想いのタネをやさしく受け止めてくれる、ふかふかの土のような存在なんです。みんなの想いのタネがのびのびと芽を出せるような場を、仲間とともにつくっていきたいです。

仲間と一緒に場づくりをすることを大事に思っていらっしゃるのですね。

ゆっちさん:以前コーチングスクールで出会った、お互いを応援してサポートし合う「相互支援」の考え方や、ナエドコ2期でみんなが自然に支え合う関係性になっていく様子に触れて、仲間がいることの尊さを感じています。仲間がいることで、お互いのことを想う愛が大きくなり、夢の実現への加速度がぐんと上がると思うんです。

ナエドコでは、会社名や役職といった肩書きではなく、想いや大事にしている内側の部分からお互いを知っていくので、深くて愛溢れるつながりが育まれているんです。広報の仕方にも色んな方法がありますが、ナエドコで出会う目の前の人たちとのひとつひとつの関わりを大事にして、丁寧に重ねることで、このコミュニティに共感する人や必要としている人たちに広げたり、届けたりしていきたいです。

わたし自身ナエドコと出会って世界が広がったので、ナエドコがより多くの人の選択肢になるように、まずは知ってもらいたい。そこにアプローチするのが、今のわたしの役割だと思っています。

(インタビューはここまで)

屈託のない笑顔に、人生を思い切り楽しんでいる気持ちが溢れ出ているゆっちさん。何者かになろうとしなくても、自分が心地良いと思う方を選び続けること、自分の納得する選択を諦めないことが、自分らしい幸せにつながるということを感じました。

食や農業や暮らしにまつわることに興味がありながらも、なかなかやりたいことが定まらずもやもやしていることを打ち明けると、「まだまだ実験し放題だよ。気になることがあるならやってみよう!」とポンと背中を押してくださって、勇気をもらいました。

小さく、一歩ずつ、実験を積み重ねていきたいと思います。

(撮影場所:バルンバルンの森
ライター/きた まゆか 編集/やなぎさわ まどか 撮影者/松木 太

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INFORMATION

よこい ゆか

よこい ゆか

ハタケトを運営するTUMMY株式会社の、想いの芽を育てるコミュニティ「ナエドコ」の事業責任者をはじめ、複数の仕事に取り組むパラレルワーカー。東京で生まれ育ち、多拠点生活を経て、現在は大分県中津市在住。1年半かけてDIYした築40年の平家で、「小さくてご機嫌な暮らし」をテーマに、夫と愛犬のマルくんと一緒に暮らしている。