2020/07/21
薬味に本気出せば人生が変わる。地味だけどあなどれない料理ハック。【畑の魅力伝道師 やなぎさわまどか】
※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。
みなさん、こんにちは。ライターで畑の魅力伝道師のやなぎさわまどかです。我が家のちいさな家庭菜園も3年目。まだまだ理想には程遠いものの、毎日いろんな変化を見せ、確実な喜びを与えてくれています。今日は、普段の食事をいとも簡単にバージョンアップしてくれた、ある野菜について綴ります。
家庭菜園の入り口といえば、プランターでも育てやすいトマト、きゅうり、レタスといったサラダ野菜、または、栽培しやすいじゃがいも、人参、大根などの根野菜が定番ですね。お料理にも使いやすいので、我が家の畑でも毎シーズン欠かせない「レギュラー陣」です。
お料理に使いやすい、と書きましたが、本気でそう思えるようになったのは今のライフスタイルになってからのこと。かつて、毎日遅くまで残業して片道1.5時間の通勤をしていた頃の私にとっては、素直に料理が楽しめない日も多く、私の都合なんぞ知らんとばかりにどんどん育つプランター野菜に喜ぶ余裕がないときすらありました。
それでも食べるものは見直したいし、できれば自分で何かを育てたい。その頃、家庭菜園セミナーに通ったり食の本を読みながら、自分なりにたどり着いたのは「香味野菜」の活用と「保存方法」でした。
「薬味」に本気を出すと、人生が変わる
子どもの頃は、まわりの大人たちが少量の、それも苦かったり辛かったりする野菜をわざわざ用意する気持ちがよくわかりませんでした。
夕食を用意する母に「ミョウガ取ってきて」とか言われると、庭の草の中に入るのが超いやだったし、これの何がおいしいのかと雑に収穫してたことを夏がくる度に思い出します。
それが今では、薬味ほど手軽に食卓を豊かにしてくれるものはないとまで思っていて、食を見直して一番よかったことは薬味のはたらきを知ったことかもしれないと本気で思います。当たり前のことなのですが、知って食べて実感することで、薬味を野菜として理解するようになりました。
たとえば、夏の暑いときに生えてくるミョウガは体温調整をしてくれます。ショウガは体を温めて胃腸の働きを助けるし、シソは抗菌や抗酸化作用があるので夏に大活躍。大根おろしの消化促進効果は、揚げ物や秋刀魚など脂質が高いものと合わせることで胃腸の負担を軽減。パクチーも抗菌作用と豊富なビタミンで栄養吸収を助けてくれるし、ニンニクも、ネギも、パセリやバジルも…と、こうした知識を得ては食べる、という経験を重ねて、自分の知恵として昇華してきました。
やや遅まきではあるのですが、個人的にはちょっとした自己満足と、何よりもおいしい食べ方を得たことを嬉しく思うのです。
薬味の意味を体感するのにもっとも手軽な方法は、フレッシュの状態でたっぷり使うことです。気軽に使えるドライやチューブの薬味も確かに便利なので否定はしないんですけど、でもそれ、野菜と認識できますか?
薬味は野菜なので、やっぱり生のものをしっかり使うと味わいが全然違います。食はいつものままでいいから、薬味にだけ気合いを入れてみるんです。
買ってきただけのお豆腐や焼いただけの厚揚げでも、刻んだネギやミョウガをたっぷり。
レトルトソースを掛けたパスタでも刻んだシソをたっぷり。
冷や飯と卵だけのチャーハンにもパクチーをたっぷり、買って盛り付けたお刺身におろしたてのニンニクやワサビ、お惣菜や冷凍のピザに採れたてのバジル、というように、薬味に本気を出すとそれだけで日常の食はグンと豊かに感じられます。
活きた薬味のおいしさと満足感を体感して以来、わたしは薬味に対して「名脇役」とか「引き立て役」といった表現を使えなくなりました。食事の支度がどんどん楽になり、実質的な時短になっている上、素直に料理を楽しめるようになったからです。以来、忙しい人が食生活のために家庭菜園を始めるなら、まずは香味野菜をお勧めしています。地味ですけど。
だって、料理に添えられたほんの数枚のシソだけでも、食卓に自家栽培があるという存在感は大きくて、誰かが「おいしい」と言ってくれようものなら、切っただけなのに誇らしくなったりします。
プランターでトマトを育て、赤くなるたび収穫を楽しむのも喜びですが、数種類の薬味があれば、年間を通して季節の自家栽培野菜が食卓に上がることになるんです。
それに薬味ならたくさん育てる必要もありません。2人住まいの我が家も、しょうがやニンニクはタネ苗で5〜6個あれば十分だし、長ネギも畝の半分だけ、バジルやパセリは2本、トウガラシとモロヘイヤは1本ずつ、ニラもほんの数本です。万能ネギは畑ではなく、キッチンからすぐ取れる庭のプランターに苗7〜8本くらい。手入れもしてないのに3年も生え続けてくれて、納豆やそうめんなどに彩りを添えてくれています。
ありがたいことに、今の畑では野草化したシソとミントが大量にあるので、生でも毎日使えたり、干しておけばドライも作れるし、食べきれないので入浴剤としてお風呂に使うこともできます。また、通年タネを蒔けるパクチーやルッコラはいつでも気軽に使えるようになりました。
フレッシュなまま保存するには発酵の力を借りる
「香味野菜」について長々書いてしまいましたが、最後に「保存」についてもご紹介します。
以前に自分のブログでも書いたのですが、わたしは常備菜やおかずの作り置きが苦手で、それでも食事の支度を簡単にするために食材をおいしい状態で保存する、ということをしています。
例えば、新玉ねぎ(上)。
スライスしたら2〜3%の塩でよくもみ、出てきた水分ごと清潔な瓶に入れるだけ。わずかな塩分でゆっくり発酵しながら保存されるので、そのままサラダや薬味にしても辛くないし、味噌汁やカレーなら入れるだけです。お昼にお蕎麦だけじゃ寂しい、なんて時もこれに小麦粉を和えて多めの油で揚げ焼きにしたら、玉ねぎのかき揚げができます。
またはニンニクのオイル漬け。
余ったニンニクをスライスしたら瓶に入れて、ひたひたにオリーブオイルを注ぐだけです。夕飯に炒め物をつくろうと思ったら、瓶から少しフライパンに移すだけですぐ料理が始められます。オイルを醤油に変えた、醤油漬けバージョンも便利です。
ニンニクを買ったら六片ぜんぶは使いきれず気づいたら芽が出てた、なんて経験がある方も、だからといってチューブにんにくに変えるのではなく、フレッシュなうちに空き瓶を見つけて漬けてみてください。
香味野菜はこういう漬け系に向いているので、ネギやニラは刻んで塩とごま油、または麺つゆに漬けておけばそのまま万能ダレになるし、大葉も小さなタッパーで醤油に漬けておけば重宝します。
こういうものがひとつでもあれば、真夏に火を使う時間を短縮できたり、薬味を摂ることで体調も整うなど、良いことづくめ。よかったらぜひ、この夏は薬味と仲良くなってみてくださいね。
ライター/やなぎさわまどか