※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。

皆さん、こんにちは。ハタケトの編集を担当しています、やなぎさわまどかです。春分の日も過ぎて桜も咲きはじめ、ひと雨ごとに気温が高まる春。畑は春撒き野菜の準備、人間界も年度末、という慌ただしいこの季節。今日は、普段から鍛えておくと役立つ力と、そのコツに関するお話です。

筋トレではつかない力

都市生活者から、自然との距離が近い山間部での暮らしをし始めたことで、最も伸びた(でももっともっと向上させたい)力、それが「目測」する力です。

(ふっくら炊けた大豆)

「目測」とはご存知のように、見ることで何かの大きさや長さを実感できることですが、この確度が鍛えられていくと、ものごと全般の落としどころが「自分にとってちょうどいい」ところに着地できるようになります。
その結果、わたしの場合は本質的に満足することが増え、他者と比較することが激減。空に向かって両手を大きく広げ、自分も他人も幸せでなにより!と祝福したくなるような、そんな精神的な解放感が増えました。

どこにいてもできるために

もちろん山に住まなくてもこのスキルが高い人はいると思うのですが、私の場合は、便利と反比例するものだったようです。便利を優先して、手間暇かかることを不便だと思っていた頃は、今よりずっと全ての目測が甘かった。たとえ目測を誤っても便利な何かでカバーできる、と考えていたからだと思います。

でも今の暮らしでは、作業時間の目測を誤ると日が暮れてしまいます。
自分の力量を見誤ると、一人では運べない物や終えられないことが出てきます。
季節や天候が読めないと作物はうまく育たないし、車間距離がつかめないと危ないし、消費量がわからないと食べ物を無駄にしてしまう。
常に「自分にとってちょうどいい」がわかって実践できることは、自分にとっても周りにとっても暮らしやすくなる、つまり生きやすくなるためにとても重要なことだと思うのです。

(米麹。全部、生きています)

大は小も兼ねるけど小にしかない良さ

ときどき「ぬか漬け、やってみたいけど大変ですか?」とか「梅干しつくるのって大変ですか?」「味噌仕込みって大変ですか?」といった、「自分でつくってみたい興味」と「大変そうでなかなか決断できない覚悟」の間を行き来してる方にお会いすることがあります。その度に、いつかの自分を思うような愛しさが込み上げて、つい「少しなら簡単ですよ」とつくる方を応援しています。

わたしのつたない経験上でいえば、大抵、いちばん最初の目測よりも「少し」や「少量」にしておいたほうがちょうどいい。それが目測を鍛える、自分にあったサイズで始める小さなコツです。

少量ゆえに扱いやすさがあり、少量のチャレンジだからこそ、自分にとってちょうどいい量がわかりやすい。たとえ、どこかの誰かが大量に扱えていたとしても惑わされることなく、自分に適した量やサイズを先に目測できることは強みです。その目測のおかげで、途中で嫌になって投げ出したりもしないし、自分で納得ができます。つまりこれ、自己理解であり、自己認識で、自己評価にできます。

ちなみにわたしの場合、ぬか漬けは最初に大きな樽サイズにチャレンジして一度挫折し、その後は冷蔵庫に収まるホーローひとつにして以来、何年も続けられています。その失敗を元に、梅干しに初チャレンジしたときはタッパーひとつ分だけ。味噌は小さなジップロックひと袋サイズだけ。今ではどちらも十数キロ単位で仕込むようになりましたが、最初は本当に超スモールステップでした。味噌に至ってはアパートのキッチンが極狭なことを理由にして、乾燥大豆すら使わず、水煮の状態で売ってる大豆を使ったりもしていました。

いずれにしても、初めの一歩が小さいことは全力で肯定したい気持ちです。

手のひらサイズの味噌仕込みレシピ

今日は最後に、誰かの一歩になることを願って、かつて水煮大豆で作っていた頃の味噌の割合をご紹介します。仕上がり量1kg弱。手のひらに乗る量ですので、食事の支度のついでなどでも仕込みやすく、事前準備も極少な、手前味噌の作り方です。

【材料】
水煮大豆(缶でも袋でも、味がついてないもの)500g
米麹 350g
海塩 125g
【道具】
・大豆を温めるための鍋
・大豆を潰すためのマッシャーなど
・材料を合わせるボウルなど
・味噌を仕込む容器、または2重にしたジップ付き保存袋。
【手順】
1. ボウルで麹と塩をよく合わせる。両手で軽く揉むようにすると合わさりやすい。少ししっとりし出すくらいまで合わせて大丈夫。
2. 水煮大豆を温める(45〜50度前後、熱めの温泉くらい。豆が硬い場合はしばらく煮る)
3. 大豆の水気を軽く切ってからマッシャーなどを使ってよく潰す。
4. 1で塩切りした麹と、3でペースト状になった大豆をよく合わせる。
5. 仕込む容器に少しずつ、出来るだけ空気を含まないよう隙間なく詰める。
直射日光の当たらない、なるべく温度差のない場所に半年〜10ヶ月ほど寝かせる。夏季などに虫が入らないよう容器ごと包むか、冷蔵庫の野菜室などで保管する。

お店で買う味噌も素晴らしいですが、自分で作った自分サイズの味噌は、食べるたびにじわじわと、自分に必要な力や自信や安心みたいなものが染み込んでくるはずです。

今度ぜひ機会があったら、皆さんの手前味噌への思い出や感想など聞かせてもらえたら嬉しいです。

ライター/やなぎさわまどか

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