2020/08/18
スープは野菜。小さな自信を重ねるために決めたこと。【畑の魅力伝道師 やなぎさわまどか】
※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。
こんにちは、やなぎさわまどかです。ライターや編集の仕事をしながら、山間部の自宅では小さな家庭菜園を楽しんでいます。
毎日なかなか理想のようにはいきませんが、畑はいつも、”空気を読まず”に、マイペースでいる大切さを教えてくれています。今年の夏は、よくできるものと全然できないものがはっきり分かれたこともあり、一層たいせつに収穫をいただいています。今日はそんな中で思い出した野菜料理のお話です。
野菜を食べなさいという呪縛
幼少期の環境が影響し、たまたま野菜が大好きな人間になりましたが、そんな私も、野菜を正義のごとく捉える風潮や、栄養素のバランスがどうのこうのと問われることは苦手だったりします。
好きだし食べたいと思っていても、思うように料理や食事ができないことはたくさんあるし、事情は人それぞれ。罪悪感や後悔の念をもちながら食べるようでは、それがどんな食事であろうとも体に良いとは言い難いし、逆に、好きなものをおいしくいただくことの幸福感だって体に良いようにはたらくと思うのです。
そんな食事の自由性を思うようになったきっかけは、初めてフルタイムで働き始めたころの出来事でした。
当時の職場の先輩は、厚労省が打ち出していた「1日30品目」を信じきっている人で、私のおむすびを見ては、野菜が足りない、タンパク質が足りないと言う人でした。しかし、一緒に働いていたアメリカ人の同僚が、斬新な視点を与えてくれたのです。
彼女は、ポテトチップスを「野菜」と言い切る人でした。
油で揚げてあろうと元のじゃがいもが野菜である以上ポテトチップスも野菜である、というロジックです。あながち間違いでもないですよね(笑)
彼女は先輩に何を言われようと「30品目は食べてないけど、でも野菜を摂ってる私は大丈夫!」と、それはそれはまっすぐに本気でそう思っていて、妊娠したら一段とたくさんチップスを食べていたし、出産した赤ちゃんも自分自身も元気なのは「野菜をたくさん食べていたからよ」と、チップスの袋を振りながら話していた笑顔を今でも覚えています。
若かりし頃の私はそんな彼女を見て、あ、自分で決めていいんだ、と気がつきました。
敬意をもって彼女のロジックを借りることにして、今ではあの時の彼女と同じように本気で、味噌汁は温サラダだ、と思っています。子どもの頃、母が作ってくれる野菜のポタージュが大好きでしたが、今思えばあれも野菜だったな、と思うのです。
(現在、厚労省の食生活指針から1日30品目が削除されていますが、削除から20年近く経った今も信じてる人は少なからずいるので、広告の力はすごいですね)
やさしくクリエイティブな野菜料理「スープ」
今でも、季節の味噌汁、とろとろのポタージュ、刻んだ野菜をコトコト煮た繊細なスープ、ショートパスタなど穀物入りのスープ、お粥みたいな軽食的なものまで、汁物全般が大好きです。総じて「スープ」と呼び、私にとってはみんな「野菜」です。
一年中スープは欠かしませんが、中でもこの季節、少しでも火を使う時間を短くしたい夏はスープがメインへと寄っていく季節。また(個人的にはあまり起きないことですが)暑さで食が細くなる方にもスープ≒野菜は強い味方になるでしょう。
それにスープって、組み合わせが自由自在で、レシピが無限大にある自由さが好きです。手元にある野菜を好きに組み合わせて、お鍋やレンジで柔らかくするだけ。水分は、水はもちろん、だし汁、好きなミルク、トマトジュースとかでもいいし混ぜるのもいい。味付けだって、簡単にブイヨンを使うのもありだし、味噌、醤油、カレー、それに隠し味だっていろいろ試しやすいですよね(個人的なおすすめはナンプラーです)
今日はこれも入れてみようかな、とそのときの感覚を活かしながら、味見するたびに変化していく過程も好きです。最終的に自分の好きな味になったところで出来上がり。二度と同じ味は作れないという刹那はじんわりと幸福をもたらすし、◯◯が無いから作れない、なんてことが起きないハードルの低さも自信にもなる。スープはつくづく幸せの野菜料理だと思うのです。スープきらいって人もあんまりいませんよね。
料理がめんどくさい人こそ買うべき道具
スープな日々におすすめなのはハンドブレンダーです。置き型でパワフルなミキサーは安心の使用感ですが、1〜2人分のスープをつくるにはハイスペック過ぎたり、大きな洗い物が増えるのも避けたい。ハンドブレンダーなら、アタッチメントを付けてそのまま鍋やボウルに大胆に突っ込むだけです。手軽で汎用性が高く、これひとつあるだけでスープが一気に身近で自分らしさを持ち始めます。
人に野菜を押し付けられるのは苦手な割に、スープで日常的に野菜を摂れているとそれだけで、ちょっと寝不足や暴食した日があっても「ま、普段しっかり野菜摂ってるし」みたいな精神的なゆとりが出たりするから勝手なもんですね(笑)
でも、暑くてつい簡易な食で済ませそうなときも、少しの工夫で無理なく旬・健康・時短を自分のものにしてきたら、なんだか小さな自信の基盤みたいな、ちょっとした底力みたいな筋肉がついてきたようにも感じる今年の夏。
まだ残暑が厳しそうですので、みなさんもどうぞ、しっかり食べて休んで、健やかにお過ごしください。
ライター/やなぎさわまどか