2021/09/18
子どもの「根っこ」を伸ばす?ハタケに学ぶ与えすぎない子育て
子どもが「育つ力」を信じて、日々の子育てを楽しんでいるファーミング・ベアこと、農家のベアくん。友人の都市りすくんは、ベアくんの考えに共感し、もうすぐ始まる自分の子育てに向けて準備中です。今日は2人の子どものパパであるベアくんに子育てのお話を聞きます。(前回の内容はこちらから)
登場人物
子育てについて色々な情報を知るほど、何が大切なのか分からなくなっちゃった。ベアくんも最初は不安だった?
そうだね、わたしも最初は手探りだったなぁ。でも今大切にしていることはひとつだけ。最低限必要なことだけを意識してから、多くの事を気にせずに子どもとの時間を楽しめているよ。
えー!たったひとつなの!?
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根っこを自ら伸ばす力
農家として畑で野菜を育てながら学んだことは、食育を含めた子育て全般に応用できるんだ。
例えば、野菜を元気に育てるために大切なのは根っこをしっかり育てること。目には見えない部分だけど、元気に育った野菜は深く広く根っこを張れているからね。根っこは広範囲に張れると自分で栄養をたくさん取ることができるし、大きくなった体をしっかり支えられる。反対に根を張る範囲が狭いと、吸える栄養は限られているし、体をしっかりと支えられないんだ。
どうしたら根っこをしっかり育ててあげられるの?
タネを蒔くとき、土に栄養をたくさんあげないことが大事なんだ。
栄養は多い方がいいんじゃないの?
タネの気持ちで想像するとわかりやすいよ。もしも自分の近くに十分な栄養があったら、そんなに遠くまで根を伸ばす必要がないよね。でも近くになかったら「大変だ!栄養を探しにいかなきゃ」と思って、どんどん根を伸ばしながら自分の力で生きようとするんだ。栄養がある場所を探りながら根を伸ばすと、結果的に広い範囲に根を張りめぐらせられるんだよ。
たしかに、ぼくなら近くに食べものがあったら甘えちゃうなぁ。
野菜の場合、一番最初に根をしっかり伸ばすことが大切でね。茎や葉がある程度大きくなってから根を伸ばす肥料をあげたこともあったんだけど、タネのときに根を伸ばすことを覚えた野菜ほどは逞しくなれなかったんだ。
きっと野菜はタネの時に、わたしたちには見えない土の中が「自ら栄養を取りに行かなきゃいけない世界」なのか「待っていれば栄養が与えられる世界」なのかを学んでいるんだよ。
生きる力ってすごいな!
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全て与えなくても大丈夫
それで、人間にとっての根っこはなんだろう?と考えてみたんだ。りすくんはなんだと思う?
人間の根っこ…。うーん、思いつかないなぁ。
わたしは、自分の頭で考えて行動する力だと考えているんだ。うちの子どもたちを見ていると、周りを観察しながら実践して学んでいる。その姿が、野菜の根っこを伸ばす様子と重なってね。もしもわたしが全て与えてしまうと、きっと自分の頭で考えることは必要ないと思ってしまう。
色々教えたくなるんだけど、ぐっと堪えて、子どもが自分で考えて出来るようになるのを待つ方が「根っこ」を育ててあげられると考えたんだ。
教えないことで、自分の頭で考えることを学んでもらうんだね。
子どもが将来どんな社会を生きるかわからないからこそ、自分の頭で考えて行動することができるようになったら親として安心できるよね。それにわたしの場合は、全てを教えなくてもいいと思ったら気持ちに余裕が生まれて、子どもとの時間をより楽しめるようになったんだよ。
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違いはあって当然
与えすぎないとは言っても、もし周りの子どもと比べて成長が遅れていたらぼくは焦ってしまいそうだよ。
そうだよね。わたしはたくさんの野菜の成長をみて、生き物の成長には個体差があるとわかったから、焦らずに子どもを見守れているのかも。
そうか、違っていて当然なのか。
うちの長女は2歳まで言葉を発しなかったけど、今はうちで一番のお話好きだし、長男は幼稚園に通わずにずっと畑で過ごしていたけど、今は元気に小学校を楽しんでいる。長い目で見た時に元気に人生を楽しめていればいいんだよ。子どもは自分で学んで育つ力があるから、りすくんも肩の力を抜いて子どもとの暮らしを楽しんでね。
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都市りすのひとこと
ベアくんの話を聞いて少し気持ちが楽になったよ。「根っこ」を育てる工夫、ぼくも取り入れてみたいな。
次回も引き続き、ベアくんが子どもの「根っこ」を育てるために心がけていることをお聞きします。お楽しみに!
ライター/わださえこ 編集/やなぎさわ まどか