2021/09/21

食卓に農と発酵を。塩麹は、自分のペースでできるクラフト発酵食【畑の魅力伝道師 やなぎさわ まどか】

※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。

皆さん、こんにちは。ハタケトで編集を担当している、やなぎさわまどかです。9月に入ったらすっかり秋の陽気ですね。家庭菜園は秋冬に向けてすることも多い時期。秋は何かとイベント事も多く、きっと暑さが落ち着いて体を動かしやすくなるのかな、とか考えたりします。そしてこのくらいの陽気だと、常温の発酵食も作りやすい時期です。

それぞれの発酵スタイル

自宅でつくる発酵食品は幅広くあり、人やライフスタイルの数だけ発酵食のスタイルもあると思っています。

わたし自身は以前、好奇心だけが先走り、「作ってみたい!」と思っては即行動。材料買ってドカンと仕込む、食べきれなくてみんなにもらってもらう、みたいなことを何度も繰り返しましたが、今、自家製する時のポイントは2つだけ。「好きな or 食べたいもの」か「毎日の食事を楽にしてくれるもの」かです。

ここ数年はだいたい、味噌と醤油が年に1回、一年分。納豆は時々。ぬか床は通年。塩麹と醤油麹も通年。ザワークラウトやピクルスなど漬物類は野菜が余った時。コンブチャやジンジャーバグはお休み中で、頻度を上げたいのが天然酵母パン、といったところ。

そう、「毎日の食事を楽にしてくれるもの」とはつまり調味料なんですよね。おいしい味噌と醤油があれば、買って開けて盛っただけのお豆腐やお刺身や缶詰めも、なんとなく「ウチの味」になってくれる。わたしの暮らしに合っているのは、そういう発酵食品でした。

(基本スタイルはご飯、味噌汁、お漬物)

麹。それはお米のポテンシャル

味噌や醤油は、料理に使うまで1年くらいの期間が必要ですが、1週間程で便利に使えるのが「塩麹」です。すでに塩麹がお好きな方には共感いただけると思いますが、塩麹がひとつあるだけでとにかく便利。本当に、本当に便利です。和食も洋食も問わず、おかずもお惣菜も、おやつ作りにも使えて、初めて塩麹を作った日がいつだったかはもう思い出せませんが、ほぼ毎日のように使っています。

(大体いつも1リットル瓶に作っている塩麹)

麹は、見た目のまんま、お米。お米に麹の菌をつけて発酵させたのが米麹です。ちなみに発酵とは、気温などの環境条件によって微生物がはたらき、有機物が分解されたり特定の物質を生成する現象のこと。塩麹の場合、分解によってお米と塩の甘みと旨味が増して合わさり、絶妙な甘辛さになったものを料理に活かしてるんですね。

麹の入手先はその時々。店頭やネットで購入したり、米農家の親のお米を使ったり、友人が作った麹を使う時もあります)

市販の塩麹もおいしいのですが、流通に乗せるためには加熱などの処理をして発酵を止めているのが一般的です。(そうしないとパウチなどはぱんぱんに膨れるはず)でも家庭で作る場合は、自分で加熱処理をしない限り、塩麹の発酵は進み続けます。そのためより一層、塩麹を料理に使う時の恩恵が感じられやすいと思うのです。
塩麹に漬けておくとデンプンやタンパク質が分解されるため、結果として、食材の旨みが増したり、軟らかくなったり、食感が良くなったり、さらにそのまま調理すると、焼き色が綺麗に出たり、照りや艶が出やすいなど、文字通りの万能調味料だと実感しています。

自作してみたくなった方へ

もしよかったら我が家の作り方をお伝えするので、ぜひトライされてみてください。材料は3つだけ、工程は混ぜると待つ、だけです。

<材料> 仕上がり 約1カップ(200g)
米麹 100g
塩 35g
水 100〜120cc

(写真では茶色い藻塩を使っていますが、好みの自然塩で大丈夫です。保存瓶と大きめのボウルも用意してください)

<手順>
1. ボウルに米麹と塩を合わせる。両手で挟み込み、お祈りする時のような手で軽くもみ合わせながら、全体的にしっとりしてくるまでよく合わせます。(私の経験上ですが、ここでしっかり手を使って混ぜる方がおいしく仕上がると思います)

2. 保存容器に移し、全部が被るまで水を注ぎ入れます。あまり水が多いとうまく発酵できない時がありますが、少なすぎても雑菌がつきやすいので、麹がぜんぶ隠れる量を目安にします。

3. 木べら等で全体を混ぜ合わせて、終了。蓋をして直射日光の当たらないところに保存します。

半日〜1日すると麹が吸水して水面が下がっているかもしれませんが、その場合は、水面から出てる麹がないように、必要に合わせてお水を足してください。また、空気に触れている表面に雑菌が繁殖しないように、1日1回、清潔な木べら等で毎日混ぜるのが大切です。

毎日混ぜる時に試してもらいたいのが、味見です。仕込んだばかりの時は鋭くカドがあるようなしょっぱさだったのが、日毎に甘みやまろやかさが含まれていく変化の体験は、ちょっと感動的です。麹の輪郭が柔らかく崩れ、全体にとろみや白濁が出て、塩麹らしい甘塩っぱいおいしさに仕上がるのはおおよそ5〜7日後。

(6日目。麹の輪郭は崩れつつ、味は甘みを含んだ塩味がいい感じに仕上がりました)

完成後の保存は、冷蔵庫だと発酵の速度が弱まり、常温だと冷蔵庫よりも早く発酵していく、という違いなので、少量ずつ作って常温で使い切るもよし、たくさん作って冷蔵保存しながら数ヶ月掛けて消費するもよし。ちなみに我が家は真夏もキッチンに出しっぱなしです。

また、この分量は作りやすい量ですが、たくさん作る場合も同じ比率、麹:塩:水= 1: 0.35 : 1〜1.2 で作り方は同じです。

(余った米麹は、次に使うのが少し先になるようなら冷凍しましょう。自然解凍すれば同じように使えます)

塩麹を作る時の麹は、乾燥でも生でも大丈夫ですが、個人的には生の麹の方が風味がよく、失敗もありません。乾燥麹にも保存が常温でいいというメリットがあるので、暮らしに合った方を選択してください。麹によって仕上がりの味も変わるので、いろんな麹を試して、お気に入りを見つけるのも楽しいと思います

塩の種類でも仕上がりの味は変わります。今回は写真でわかりやすいよう色のついた藻塩を使いましたが、白い塩で真っ白に仕上がった塩麹も美しくて大好きです。ちなみに塩麹は、ミキサーに掛けてツブツブを潰してもOK。真っ白のソースみたいに仕上がりますよ。

最初の仕込みの時にすりおろした玉ねぎやニンニク、ネギやきのこなど、手元にある香味や季節のものを一緒に発酵させるのもまた便利な逸品ができます。塩麹の自家製に慣れた方はぜひ。

(左がドレッシングなどに便利なレモン入り塩麹中央は即席のお吸い物にできる椎茸の塩麹、右は炒め物に大活躍する玉ねぎとニンニクの塩麹

塩麹の料理への使い方は数回使えばカンがつかめると思いますが、最初はシンプルに、塩の代わりにするのが近道です。おおよそ塩の倍量(例:塩小さじ1の代わりに塩麹小さじ2)を目安にしてみてください。塩分量を気にしている方への目安としては、上記の比率だと塩麹の塩分は約13%、塩麹小さじ1(約7g)で約1g前後の塩分になるようです。
いつもの野菜炒め、チャーハン、サラダ、炊飯、パスタソースなどなど、塩の代わりに塩麹を使うことで、摂取する塩分量自体は少なくでき、同時に、素材のうまみを引き出す効果によって、満足度の高い風味が加わります。

あと我が家では、漬け床として使うことも多いです。水切りした木綿豆腐を3〜5日ほど塩麹に漬けて、チーズのようになった豆腐をサラダに使ったり、あと、夫はよく生肉を塩麹に漬けて保存しています。食事の時にそのままフライパンで焼いていますが、他に何も足したり考えたりする必要もなくおいしくなる、と絶賛。おいしいお肉のために、塩麹の残りが少なくなると自分で仕込むようにもなりました。

少し変化球な使い方としては、スプーン1杯の塩麹をお湯で溶いて即席の出汁やお吸い物みたいにしたり、野菜や果実のスムージーにちょっとだけ入れたり、マフィンを作る時にほんのり効かせたり。あ、ひとつ要注意は、加熱調理でない場合、デンプンを分解し続けるので、ポテトサラダの味付けに塩麹を使うとジャガイモがどんどん溶けていくこと!笑。ただそれも慣れてくると、あえて柔らかくしたい時に使ったりもできるので、まずは少量ずつ、キッチンのおいしい実験といった気持ちで楽しんでください。何かおすすめの食べ方を見つけた時には、ぜひ教えてくださいね。

ライター/やなぎさわまどか