2020/08/30

イベントレポート  食と農のもやもやゼミ 第1回有機ってなんだ?初級編

こんにちは。畑の魅力伝道師で、ハタケト編集長のあべなるみです。

今回は新連載!わたくしあべが有志のメンバーとともに開催している「食と農のもやもやゼミ」の内容について、事後レポートを連載していきます。

「食」に興味があっても、その先の「農」を知るのは難しい?

「食と農のもやもやゼミ」とは、「分かるようで分からない食の裏側」について、農業を経済学や社会学、生態学など多様な視点から勉強しているゼミメンバーが情報を共有しながら、みなさんと学びの視点を深める公開勉強会です。食はわたしたちの毎日のことなのに、その先の農業をはじめとする一次産業や、流通・消費の仕組みについて学べる機会が少ないのでは?という問題意識から始まったこの勉強会。畑と共に生きる豊かさを紹介するハタケトの読者のみなさんにもぜひ共有したい内容が多いなあと思ったことから、一部内容をここでレポートしていきます。

(当日の資料より抜粋)
(当日の資料より抜粋)

メンバーはこの4人をはじめ、食や農に関心のあるメンバーで運営しています。

左上から順番に、きしもとはるかさん石川りんさんふうきさん、あべ。他にも何名かのメンバーで実施しています。

様々な視点から「有機」に迫る

さて、第1回のテーマは「有機ってなんだ?」でした。

「有機ってなんかいいイメージがあるけど、実際何が違うのかよく分からない」と思っている方も多いのではないでしょうか。実際、関心をお持ちの方が多かったからか、当日は70名を超える参加者が集まってくれました。

ゼミメンバーからは定義、自然科学、実態、歴史、実例など、さまざまな視点から「有機」について紹介しました。

わたしのコメントもはさみつつ、ポイントだけザッピングするとこんな感じ。
(当日の全ての内容をレビューするものではないので、もっと気になるという方はぜひ当日にご参加ください。)

●法律の定義

「有機農業とは化学的に合成された肥料および農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」(2006年有機農業推進法)

→日本では安心・安全とか、”無農薬”のイメージが強いですが、法律上の定義では環境負荷の視点で定義された言葉。農薬も「化学的に合成された農薬」を使っていないということなので”無農薬”では厳密にはないのですね。

●自然科学的な視点

生産性の追求で窒素過多になることが環境汚染に繋がる。有機肥料は化学肥料に比べて、環境への窒素流出が少ない傾向にあるため、環境負荷が少ないと言われている。

→自然科学的に有機の方が環境負荷が少ないとされるゆえん。しかし、環境負荷がない、ゼロというわけではない。「ない」と言われた方がスッキリされる方が多いと思いますが、そういうわけではありません。また次回の中級編では有機農業でも環境負荷がかかるという視点もあるという話もでます。

●生産の実態視点

高温多湿な日本農業に有機は難しく、全農家の0.5%しか有機農家はいない。また有機農家の認証(有機JAS)の取得は高額で基準も厳しいため、全員が認証を取得しているわけではない。
一口に有機農業といっても生産者によって様々な流派があり、よく混合されるものとして自然農法がある。自然農法は肥料を加えない、人の手もなるべく加えないというスタイルで有機よりも、環境のためストイックな関わりをしている傾向。

→有機農業と言っても、日本の気候の中でどうやるのか、認証はとるのか、何を大事にする思想でどんな流派を選択するのかなど、生産者は意思決定がとても難しそうですね。

●歴史の視点

日本では公害問題への不安をもった主婦の提携運動から有機が広まった。

→今では当時ほどの危機意識はなくなってますから、わざわざ有機農業を選ぶ理由、が消費者の中で曖昧になっているところはあるかもしれません。

●実例の視点

コウノトリが飛来する兵庫県豊岡市などは町をあげて有機農業を推進している。行政やJAによって積極的に取り入れて行こうとする地域もある。

→日本全体として有機推奨というよりは、地域によって推しているところもある、というのが現状。そういったところもまだまだ少数というのが実態のようです。

で結局、有機の方が良いの?

ここまでの内容を読んで、思わずそう聞きたくなってしまった方もいるかもしれません。

このゼミではより学びを深める視点の提示は行いますが、その先の結論、正解は出しません。

どう関わるのか、決めるのはあなた次第。

少しでしたが、こうした「有機」を捉える様々な視点が、あなたの態度を決めるきっかけになったら嬉しいです。

食と農のもやもやゼミ、絶賛開催中!

このような形で毎回テーマを決め、行なっている食と農のもやもやゼミ。過去に5回の会を開催し、今も継続しています。

次回は、「動物の命を食べるということ」というテーマで9月6日(日)21:00〜開催です。お肉って、多くの方が当たり前に食べていますが、人によっては食べない主義の方や量を減らしている方もいますよね。この会では今一度「お肉を食べること」ってどういう視点で捉えられるかな、ということを考えています。「食べるべきではない」など特定の結論を出すことはしません。でも、今一度学んでみませんか?興味をもってくださった方はぜひ当日の勉強会にも参加してみてくださいね。

申し込みはこちらから: https://forms.gle/X3n84mxPWagNPZTz9