2021/04/13
わたしにしかできない「食育」の形。経験と実践で掴んだもの。【 畑の魅力伝道師 寺田賀代后 】
※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。
こんにちは。畑の魅力伝道師、寺田賀代后(てらだかよこ)です。「正解のないもの」と向き合ったときどう感じますか?
わたしは自分にしかできないものを作れるというワクワクと「いや、とはいってもちょっとだけ見本見せてよ・・・」という失敗が嫌いな自分が交差して変な気分になります。
でもその挑戦が不可能を可能にする。大袈裟ですがわたしが仕事をする上で感じた「正解のないもの」との向き合い方のお話です。
八百屋人生の中で大切にしている、わたしの「食育」
野菜を扱い、子どもを育てる女八百屋として「食育」は切っても切り離せません。
誰もが子どもたちの健康で健やかな日々を願うはず。
自身の美容のためを原点に野菜の世界にのめり込んだわたしは、極端な故に、お肉を全く食べないベジタリアンを生きた時代もありました。お肉を食べないことで健康にも美容にもいいし、それだけでなく動物を守れたり、貧しい国も救えるし環境にも良いと思っていたからです。
同時に、それは自分ひとりが実践しただけでは何も変わらない事もわかってました。
良いと思ったことを伝え、広めることは好きですが人に強制もしたくないし、肉を食べないなんて極端なこと、人は簡単にはできない。
だから今より野菜を多く食べてほしい。
そのためにおいしい野菜を知ってもらい提供する、「寄り添った協力」というスタンスになりました。おいしい野菜に出会えた結果、たなぼた形式で人生が豊かになってもらいたかったのです。
無理強いしない食育の形
「食育」を伝える時にもこのスタンスは変わりません。
わたしが追求し伝えることにより、ママやパパに負担をかけたり、子どもたちの楽しみを奪ってしまうことはわたしが望んでいることではないから。
誰かの正解はだれかの失敗にもなるのです。
前回のコラムでは「ベジふるギフト」がたくさんの可能性を秘めているとお伝えしたかと思いますが、「ベジふるギフト」は食育との相性もいいのです。
実際にどんな食育の授業をしているのか、少しご紹介させてください。
子どもたちの興味を引き出す「旬ゲーム」
カボチャは秋のお野菜だと思っていたり、イチゴは冬だと思ってたり。スーパーでいつでも同じものが手に入る昨今は、大人も野菜たちの旬を知らないことがあるかもしれません。
春夏秋冬のどの枠の中にお野菜たちが入るのか、一年の中でとってもおいしくなる時期を知ってもらう「旬ゲーム」は意外と大盛り上がりします!
子どもたちが作る「Myベジふるギフト」
旬ゲームで楽しく学んだあとはこちらでお野菜や果物を用意して、自由に制限なく子どもたちにベジふるギフトを作ってもらいました。子どもたちが楽しみながら作ったベジふるギフトは個性的でかわいいものばかり。最後にお名前カードを刺してできあがりです。
作るだけでは終わらない
完成したベジふるギフトはわたしたちが丁寧にラッピングし、お持ち帰りできるようにします。そしてお迎えに来てくれたパパやママにプレゼント!
自分たちで作ったベジふるギフトのお野菜を自慢げに話したり旬の話をしたり、ご自宅でおいしく料理された野菜たちを嫌な顔せずに食べてくれた、とご家族からも大好評でした。
正解がない。だから楽しい。
ベジふるギフトを作る子どもたちは、葉っぱを切ったり、そのまま使ったり、刺しこんだり。ミニトマトはヘタが上?下?取る?なんて一生懸命考えたギフトで、どれもとても素敵でした。
都会の幼稚園や保育園、子どもスクールでは畑で採ったお野菜に触れる機会が少ないのが現状ですが、ギフトを作ると普通のお野菜が「自分たちの作ったお野菜」に大変身するのです。
もちろんわたしが見本を見せるのですが、そんなことは考えずどんどん自分のオリジナルを極めていきます。
何よりそれをほかのお友達と見比べるわけでもなく、集中して自分の思う正解を見つけていきます。
ベジふるギフトは小さな自己表現の世界なのです。
お野菜を食べるのが楽しみになる魔法の授業。
それがわたしにしかできない「食育」です。
ママやパパ、先生や子どもたちには肩肘張らず、無理のない範囲で食育をしてほしいです。
勉強も食育も、「楽しい」と感じられれば勝手に子どもたちは興味を持ちます。そんなきっかけを提供できる、やっぱりちょっと変な八百屋でいたいなと思います。
ライター/寺田 賀代后