2023/09/01

「自分にしかできないことをやる」老舗の八百屋が挑む食品ロス問題

aiyueyoは人にも地球にもやさしい暮らしを叶えたい企業や団体と手を取り合っています。本連載では日常の小さなエコアクションを応援するコミュニティ「暮らしの目からウロコ」と一緒に地球にやさしい暮らしを楽しむヒントをお届けしていきます。

今回は環境・社会・地域のことを考えて行動する人=ウロコ人の活動から、地球にやさしい暮らしのヒントを一緒に考えましょう。

日本では今、毎日お茶碗一杯分のまだ食べられる食品が廃棄されています。食材は買いすぎない、飲食店では食べられる分だけ注文するなど、食品ロスに対して自分ができることに取り組んでいる人も多いのではないでしょうか。

でも実は、食品ロスは私たちの知らないところでたくさん発生しているんです。その一つの例が、中央卸売市場です。野菜や果物を生産者から仕入れ、八百屋やスーパーに卸す役割を果たしている中央卸売市場では「需要と供給が一致せず、行き場を失った余剰青果」が多く発生し、廃棄されているのです。

そんな流通現場で起きる食品ロス問題に挑む、ロックな八百屋さんがあります!
自らを「フードロスおじさん」と名乗り活動する、京都の老舗の八百屋「西喜商店」の4代目、近藤貴馬さんです。

私たちの手に届く前に起こってしまう食品ロス。その問題に対して近藤さんがアクションを続ける想いや、私たち消費者ができることについてお伺いしました。

家業を継ぐ気は0。テーマパークづくりが夢だった。

── 近藤さんが切り盛りされている西喜商店について教えてください。

近藤貴馬さん(以下、近藤さん):西喜商店は、京都中央卸売市場の場外売店です。僕のひいおじいさんが大正末期に八百屋を作ったのが始まりで、戦後におじいさんが継いだ頃に市場が整備されました。その時に、一般の方向けに野菜を売るための店舗の権利を取得して今の場外売店の形になりました。その頃は今とは違う場所にお店を構えていて、60年、父親の代に代わってからもトタン屋根の掘っ立て小屋のようなお店で営業を続けていました。

昔の西喜商店

──昔の映画に出てくるようなお店ですね。

近藤さん:僕が継ぐ時に、DIYで少しお店をきれいにしました。今思うとおままごとみたいですね。3年前に今の場所に移転しました。

近藤さんが西喜商店を継いで初めてお店に立った日

──代々八百屋をされていた近藤さんのお家ですが、近藤さんが西喜商店を継ぐのは昔から決まっていたんですか?

近藤さん:いや、まったく継ぐ気はなかったですね。やりたいことがあったので、大学を卒業して東京で就職しました。株式会社セガに入社して、テーマパークを作るプロジェクトに関わっていたんです。大きなプロジェクトで、ディズニーランドくらい規模の大きいテーマパークをつくる想定だったんですよ。

──わあ、なんて夢のあるプロジェクト!テーマパークづくりがやりたいことだったのですか?

近藤さん:大学生の時からイベントとかお祭りが好きで、そういうのが仕事にできたら嬉しいなって思っていたんです。だから大きなテーマパークを作るってワクワクして、夢が叶って嬉しくて。でも、入社一年目の終わりでプロジェクトは中止になってしまいました。

──一年目で!?

近藤さん:そう、入社二年目で仕事がなくなったんですよね。結構苦痛でしたよ。周りの友達はバリバリ仕事しているのに自分はすることなくて…ちょうどそのころリーマンショックが起きて転職市場も下火で職を変えることもできず、お先真っ暗な新卒3年間でした。

「西喜商店という八百屋を継ぐのは世界中探しても僕しかいない」という使命感

近藤さん:そんな時に東日本大震災が起こって、世の中がどんどん変わっていくにつれて自分の考え方も変化していきました。地域で頑張る人に刺激を受けて、僕も何かしたいと思うようになって。そんな時にふと、実家が八百屋だと思い出して、「京都で八百屋やったらおもしろいかも」「実家継ごうかな」って人生で初めて思いました。親にはめちゃくちゃ反対されましたけどね。

──なんで反対されていたんですか?

近藤さん:親としてはやっぱり会社員のほうが給料が安定していてちゃんと休みが取れるから、そっちのほうがいいって考え方ですね。言いたいことは分かるんですけど、継ぎたいって思っちゃったからもうやるしかない(笑)親を説得するのに時間がかかりそうだったから、東京で野菜の直売マルシェの運営に関わるようになって、それが法人化したタイミングで2年間という期限付きで雇ってもらいました。そこで修行して、京都に帰ってきました。

──結局親御さんは納得してくれたんですか?

近藤さん:父親が、「結婚して家を持つなら継いでよし」という条件を提示したので、その瞬間に必要な手続きとか全部やっちゃいました。

──近藤さんが八百屋を継いだ理由に、「食への関心」はあるのでしょうか?

近藤さん:実はあんまりないんですよ(笑)。僕が八百屋をやっている理由に、「頑張る農家さんのため」とか「みんなにおいしい野菜を食べてもらいたい」という気持ちもありますが、熱源はそこではないんです。それよりも、「西喜商店という八百屋を継ぐのは世界中探しても僕しかいない」という使命感や、「地元に貢献したい」という思いの方が強いですね。
でも、おいしいものを食べるのは昔から好きでした。八百屋の息子なので、野菜や果物はずっといいものを食べていた自負はありますね。食べ過ぎてて、もはや果物はあんまり好きじゃないですけど。

仲間と一緒に何かを作り上げていくことを一生やっていたい

──近藤さんは京都で食に関するイベントもたくさん開催されていますが、料理はお好きなんですか?

近藤さん:好きですよ。一人暮らしをしていた時はよく自炊をしていました。料理って、目的を定めて、そこに向かって進めていくじゃないですか。例えばカレーを作るとき、どういうカレーを作ろうかというプランニングからはじめて、そのために必要な準備をして材料をそろえて、手順を決めて進めていく。そういう行程立てて積み重ねていくことがプロジェクト感があってめっちゃ好きなんですよね。

──先ほどイベントやおまつりが好きと仰ってたこととつながるのかなと思うのですが、近藤さんはみんなで何かを作り上げることが好きなんですね。

近藤さん:イベントや何かを作り上げていくというのは、一生やっていたいくらい好きですね。学生のころから文化祭や生徒会活動がすごい好きで。特に大学は楽しかったです。僕がいた学部はちょっと変わった人が集まりやすいところで、その学部ではとがった者が勝ちというか、おもしろいことをやればやるほど、もてはやされるんですよ。そんな雰囲気の大学だったからどんどん仲間が増えました。そんな原体験からイベントやおまつりが好きだと思うようになったんですよね。だから今もいろんなイベントをたくさんやっています。

どうせやるなら、楽しく食品ロスに向き合う

──そんな近藤さんが食品ロスに取り組み始めたのはどんなきっかけがあったんですか?

近藤さん:八百屋を継いですぐの頃、父が市場から大量の水菜を仕入れてきたんですよ。市場から「大量に余っているから、さばいてくれ」って頼まれて。それを袋に詰めて店に出すんですけど、多すぎて売り切れないからどんどん傷んでいくんですよね。傷むと売れないから捨てるしかない。その光景を目の当たりにして単純に「もったいない」と思ったんです。

──売れ残ってしまったから捨てる、食品を扱うお店にとっては普通の光景なのかもしれませんね。

近藤さん:そのあとも、八百屋が軌道に乗れば乗るほど、市場から「ついでにこれも売ってくれ」と頼まれるものが増えていきました。仕方ないから買い取るんですけど、もともと売る予定のなかった品物や量なのでどうしても売れ残ってしまう。売れない、捨てるを繰り返していたらやっぱりもったいないから何とかしたいと考えるようになって。そうしたら周りの人から「子ども食堂に持って行ってはどうか」と言われたのでやってみたんですけど、うまくいきませんでした

──確かに需要は高そうなのに、どうしてうまくいかなかったんですか?

近藤さん:子どもはあんまり野菜を食べないからです。せっかく楽しい子ども食堂に行くのに、小松菜のお浸しとか水菜のサラダとか、子どもは嬉しくないでしょう?やっぱりカレーや焼きそばがいいじゃないですか(笑)。だからあんまり盛り上がらなくて。せっかくなら、楽しい活動にしたいと思って、京都市の市民活動支援プログラムに参加して、いろんな人に企画のアイデアをもらってできたのがお店で余った野菜をみんなで料理して食べる「さらえるキッチン」というイベントです。仲間を集めて考えるその企画が、おまつりみたいでめちゃくちゃ盛り上がって。僕自身も楽しかったので「さらえるキッチン」を何度も開催していたら、いつの間にかフードロスの人になっていました。

──それが「フードロスおじさん」の始まりなんですね!

“ロスがあるから野菜が手軽に買える”ジレンマ

──近藤さんが食品ロス問題に取り組んでいることに関して、市場側はどんな風に受け止めていらっしゃるんでしょうか?

近藤さん:軽く「助かるわ~」みたいな感じ。そもそも市場側にフードロス対策をしようという意識はあんまりない印象ですね。
というのも、市場側は農家が持ってきた野菜はすべて買い取らなければならないというルールがあります。これは農家を守るためであり、消費者を守るためでもあるんです。もし市場が需要に見合った分だけの野菜しか買い取らない・流通させないという方法を取ってしまったら、もちろんロスは減るけれど、天災で特定の野菜が収穫できないときなど、何かあったときに消費者が買えないような価格になってしまいます。もちろん今の流通方法でも短期的に特定の野菜の価格が上がることはありますが、ほかの野菜がたくさんあるから上がり幅は比較的抑えられるんです。ロスがある前提だからこそ、皆さんが安く手軽に野菜を買うことができるんです。

──そんな難しい問題に直面しながらも、近藤さんがレスキューを続けられるのはなぜなんでしょう?

近藤さん:僕がやらないと誰もやらないという使命感ですかね。もちろん批判もあるし、店としては儲からない仕事ですけど誰かの役に立つならいいかなと。

インタビューの日、その場で2,000円分のレスキュー野菜を詰めていただきました

──批判があるんですか?

近藤さん:初めから分かっていたことですけどね。レスキューとはいえ野菜を安く売るわけですから、そうすると値崩れが起きるじゃないかというのは、農家さんからすれば当然の主張です。加えて、レスキュー商法だと言われることもありますよ。人の善意を利用してわざとレスキューと言っているんじゃないか、とか…。

──こうして近藤さんと会ってお話しして取り組みを聞いていると、決してそんな商法ではないと分かるのですが、これだけSNSが普及しているとどうしてもそういう批判が起きてしまうんですね。

近藤さん:難しい問題ですよね。

小さなお店で、会話を楽しみながら買い物をしてほしい

──ところで、今の時期はどんな野菜をレスキューすることが多いですか?

近藤さん:実は余剰野菜に季節性ってないんですよ。これ、まさに昨日レスキューしてきたやつなんですけど、メークインのじゃがいもです。春夏に市場が買い取ったメークインの小さいやつが大量に余ってて。小さいと飲食店も使いにくいし、男爵系は引き取り手があるんですけどメークインはあんまり人気ないんですよね。これ1箱1,000円。

──え、そんなに安いんですか!?

近藤さん:市場も困ってるんですよ。とにかくさばかなきゃって。
こっちは丹波の大黒しめじ。これめちゃくちゃおいしいんですけど、欠陥品なんですよ。首に皺が入っていて。鮮度はいいんですけど、首に皺が入っているとそこから水分が出やすくて、悪くなりやすいからお店には並べられない。「味には支障ないから、笠だけ食べてね」って言ったら売れるんですけど、そんなコミュニケーションがとれる店ってあんまりないでしょ?

──確かにそうですね。でもここにきて、そのお話を聞いたら買えますもんね。お店に立っていて、消費者の意識が変化していっている実感はありますか?

近藤さん:うちのSNSを見て、「2000円分適当にレスキュー野菜詰めて」って買いに来てくれるお客さんが増えて、少しずつ情報発信の結果は出てきているなと感じています。
そんな風に、寛容な人が増えていったらいいなと思うんですよね。皺が入ったしめじも気にしない、ちょっと色が悪い青菜も食べられる。その時ある野菜で料理を作る。いろんなことを許容できる社会になったらいいなと。そうなるだけで、食品ロスは減ると思います。

──食品ロス問題に対して、今日から私たちができるアクションを教えてください!

近藤さん:小さい規模のお店で買い物をしてみてください。もちろん大前提として、好きな場所で好きなものを買ってもらうんですが、近くの商店街のお店とかで、お店の人と会話しながら買い物してほしいです。もちろん「今日のオススメは?」って聞いてみるのもいいし、余裕があれば、お店の人も余剰野菜の話ができて、「じゃあそれも買おうかな」って気分になるかもしれない。店主と話しながら買い物することで、野菜への意識が高まったら、今度は農家から直接買うなど、もっと生産現場に近づいていくきっかけになります。野菜だけじゃなく、肉や魚も一緒ですよね。もっと生産者に近くなっていったらいいなって。もちろん無理のない範囲でね。

──最後に、これから近藤さんがやりたいことを教えてください。

近藤さん:若い世代の人と一緒に何かしたいですね。食を通じて社会貢献したいと思っているような学生さんたちに、僕なりに伝えられることっていっぱいあるなと感じているし、みんなで料理を作ってみんなで食べることにものすごい価値があるんだぞと伝えたいですね。

──食に関心のある学生さんは近藤さんの元に集まれ〜!ですね!

(インタビューはここまで)

インタビューの中で、八百屋を継ぐまでの近藤さんのお話もたくさん伺いました。近藤さんは「これ八百屋と全然関係ないな」と笑いながら話されることが多かったのですが、「地域のために何かしたい」「仲間と一緒に楽しいことがしたい」という近藤さんの原点が今のフードロスおじさんとしての活動を「たくさんの人が関わりたくなるイベント」に昇華させているんだと感じました。

環境問題も社会問題も、どうしても深刻で大変な問題だととらえられがちですが、少し視点を変えるだけで楽しく身近なアクションにつながっていきます。

まずは近所の小さなお店で買い物をすることから、始めてみてくださいね!

西喜商店・近藤さんと暮らしの目からウロコがコラボしたオンラインイベントは9月10日(日)10時〜開催します!食品ロス問題についてお話を伺うだけでなく、野菜の皮や端っこを使用して作る「ベジタブルブロス(野菜だし)」の料理教室も同時開催です♪

イベントチケットはクラウドファンディングサイトForGoodにて販売中です。
チケットのお申込締切は9/4(月)まで。近藤さんチョイスのレスキュー野菜BOXが届くチケットもあります。アーカイブでの参加や耳だけの参加も可能ですので、ぜひご検討ください!

<イベントチケットはこちらから>

INFORMATION

西喜商店 近藤貴馬

西喜商店 近藤貴馬

京都の老舗青果店、西喜商店の四代目。㈱セガにて6年間営業職を務めた後、㈱地元カンパニーに入社。「地元のギフト」事業の全国展開を担当。営業のみにとどまらず地域に関わる様々な業務をこなし、2015年に京都にUターン。現在はリノベした京町家に住みながら、西喜商店の事業拡大に取り組む。