2026/02/17

里山と食文化を次の世代へ~柚香めでたべ会レポート~

「より豊かな里山を自らの手で作り、食文化を守っていく。一つひとつ積み上げていけば、50年後のこの場所が豊かに変わる」

こう話すのは、徳島県上勝町で幻の柑橘と呼ばれる柚香(ゆこう)を栽培する、シシトトラ浅野農園の浅野秀美さん。

今回わたしたちは、柚香の魅力やおすすめレシピとともに、上勝町での取り組みについて伺う『柚香めでたべ会』をオンラインで開催し、秀美さんにたっぷりお話を伺いました。当日の様子をチームaiyueyoのなべたけいこがレポートします!

つくり手さんとナビゲーター

今回柚香を提供し、お話をしてくださったのは、シシトトラ浅野農園の浅野秀美さん。

秀美さんは、徳島県上勝町で柚香の栽培と普及活動を行う農家さん。ご自身は、元々は農家ではなく、徳島市内で生まれ育ち、大学と会社員時代の12年は京都で過ごしたのち、徳島に帰り、結婚を機に上勝町に移住したそうです。

ご自身の祖父母の畑にあったすだちを見て「もったいないから出荷してみよう」と思ったことがきっかけで農業に足を踏み入れ、その後土地を譲り受けて、農家になりました。

農園名「シシトトラ」は、祖父の猪平(いへい)さんと祖母のトラノさんの名前から取ったもので、ロゴには2人へのリスペクトも込められているんだとか。

ナビゲーターは、チームaiyueyoのかんばやしちえこ(ちえこ~ぬ)。

ちえこ~ぬが柚香に出会ったのは、なんと12年前。徳島県の山の中にある農業インターン先で食べた「おばあちゃんのお寿司」。柚香酢(柚香果汁)が使われていたそのお寿司に感動し、忘れられない味を多くの人に伝えたい!という強い想いから、今回のめでたべ会開催に至りました。

12年越しの想いが詰まった当日の様子を詳しくお伝えします!

徳島の幻の柑橘「柚香」とは?

柚香は、徳島県の中山間地帯でのみ栽培されるゆずと橙(だいだい)の自然交配で生まれた柑橘です。江戸時代頃から徳島県をはじめとする全国で栽培されていましたが、現在の生産量は日本全体のゆず生産量のわずか1%しかありません。

柚香の特徴は、皮の薄さと豊富な果汁、そして完熟して糖度が上がることで生まれる深いコクです。一般的に流通している柚香は10月に収穫され、青い状態で出荷されますが、浅野農園では完熟した黄色い柚香のみを取り扱っています。ペーストや果汁などの加工品も製造し、1年中流通できる取り組みも行っています。

浅野農園では、先祖代々残してくれたこの柚香を守って行くとともに、食文化の継承にも力を入れています。

見て食べて香って楽しむ「めでタイム」

まずは、色や形、手触りを確かめながら、柚香の個性を愛でてみましょう!
参加者のみなさんのご自宅にお届けした柚香を手に取ってもらい、観察からスタートします。

浅野農園から届いた柚香は、黄色い皮の柑橘。まるで小ぶりのミカンのようです。
横半分に切って、香りを嗅いでみると……果汁がじゅわっとあふれて、甘く爽やかな香りが広がります。

参加者からも
「切った断面がつやつやでウルウル!」
「いい香り!がぶっとかぶりつきたくなる!」
「見た目はミカン、でもゆずのような香りがするので、頭がちょっと混乱する」

など声が上がります。普段何気なく使っている柑橘類も、こうしてじっくり観察すると新しい発見がありますね!

次に、実際に柚香を味わってみましょう!

今回は、秀美さんおすすめの「ホット柚香蜂蜜」を作ります。
作り方は簡単!柚香果汁に蜂蜜を加えて、お湯を加えるだけ。秀美さん曰く、すりおろしたショウガを少量加えても美味しいとのこと。

参加者からは、「レモンより酸味がまろやか」「深みがある」「爽やかでおいしい」との声がありました。柚香のコクと旨味を感じることができる、心も体もほっこり温まる一杯でした!

徳島県上勝町と浅野農園の取り組み

秀美さんが暮らす上勝町は、人口1,288人の四国で一番小さな町と言われています。

上勝町は、「ゼロウェイスト宣言」をしている町としても有名で、43分類にもわたるゴミ分別を行い、リサイクル率80%を達成しています。

また、料亭などで季節の彩りとして松や南天などの葉っぱや花を出荷する「葉っぱビジネス」を行う町としても知られています。その品種は年間200を超えるのだとか。

浅野農園では、秋冬は柑橘農家として柚香を出荷し、春夏は葉っぱビジネスを中心に農業をされています。

秀美さんは、農家になってから「幸せの感じ方が大きく変わった」と語ります。都市での会社員時代はストレスを溜めて、それを発散するためにお金を使う「負の循環」に陥っていたそう。でも、上勝町で農業を始めてからは、地球が作る幸せや自分で作ったものの美味しさなど、他人に左右されない幸せを見つけることができたとのことでした。

また、山の見え方や解像度が変わったとも話します。

今までは「ただ豊かな山」と思っていたけれど、最近は生態系や土の状態まで細かく観察できるようになり、自分が地球の一員として生きていることを実感するようないい影響があったと話されていたのがとても印象的でした。

最後に、秀美さんの今後の展望について伺いました。

「いま、自分たち家族が上勝で暮らし、生活が豊かだなと感じているのは、自身の祖父母がこの地で里山を管理し、食文化を守ってきたから。自身の原体験から、今度は自分が誰かの帰る場所をつくりたい。豊かな里山を守り、食文化を守っていくために、一つひとつ積み重ねていきます。」

本編終了後も、お楽しみは少しだけ続きます。
「放課後タイム」と称して、秀美さんとのランチを任意参加で実施。本編では聞けなかったことをざっくばらんにお話しながら、各々の食事を楽しみました!

農家直伝!おすすめ柚香レシピ

秀美さんに柚香を使ったレシピ2つをデモンストレーションしていただきました!

柚香ポン酢

柚香果汁をお皿に絞って、同量の醤油を加えて混ぜるだけ。秀美さんは、徳島を出る18歳まで「ポン酢は日本全国でこういうもの」だと思っていたそう。

ちなみに、柚香農家では水炊きの際に、各自の器で自分好みのポン酢を作って食べていて、秀美さんは子どもの頃からそれが大好きだったとのこと。お鍋の季節にぜひ試してみたいですね!

かきまぜ寿司

かきまぜ寿司は、季節の野菜や山菜を入れた郷土料理。酢飯は、柚香果汁に、砂糖と塩を混ぜて寿司酢をつくり、2合のご飯全体にかけて混ぜ合わせてつくります。仰ぎながら作るとご飯がつやつやになるそうです!

この日は、ひじきと油揚げ、ニンジンを細かく切って甘く炊いたものを混ぜ合わせていますが、柚香酢でしめた魚と合わせても美味しく食べられます。ぜひ試してみてくださいね!

参加者の声

柚香の魅力や、農家さんのストーリーに触れた参加者のみなさんの声をご紹介します。

おわりに

今回の柚香めでたべ会では、ただ「柚香」を愛でて食べるだけではなく、上勝町や里山について、また地域の食文化や暮らしについても、深く考える機会となりました。また、秀美さんの50年先を見据えた取り組みに、未来を紡いでいく大切さを感じました。

普段何気なく口にしている食材にも、こうしたストーリーや想いが詰まっています。めでたべ会をきっかけに、「食べる」時間がより愛にあふれたものになると嬉しいです!

次回のめでたべ会もお楽しみに!

シシトトラ浅野農園さんからのお知らせ

3月に東京・新宿の百貨店で柚香スイーツの出店を予定しているそうです。

詳しくは、浅野農園の公式Instagramをチェックしてくださいね!

ライター/なべたけいこ

INFORMATION

シシトトラ浅野農園 浅野秀美

シシトトラ浅野農園 浅野秀美

徳島県出身。結婚を機に徳島県勝浦郡上勝町へ移住。

父の故郷だった上勝町にある祖父母が使わなくなってしまった土地を「もったいない!」と感じ、2021年より、葉っぱビジネスと香酸柑橘(すだち、ゆず、ゆこう)の栽培メインに小さなサスティナブル農園を営む。

いまは柚香を栽培する人が減ってしまい、危機感を覚えた秀美さんは祖父母が暮らしていた上勝町へIターンし、果樹園を継承。