2020/12/23
苦手なことを隠して生きるの、もうやめた。思考は経験を通して知恵となる【 畑の魅力伝道師 やなぎさわ まどか】
※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。
皆さん、こんにちは。食や環境をテーマにしているライターのやなぎさわまどかです。今日は、畑や家庭菜園を話題にしたときのリアクション第1位(当社比)ともいえる、小さな存在との付き合い方について、です。
「わたし、虫が苦手なんで」
わたしが家庭菜園を楽しんでいることや、農家さんを尊敬してることなどを話題にすると、おそらく3人中2人くらいはこうおっしゃいます。なかには申し訳なさそうな表情をされる方もいるのですが、いいんです、いいんです、正直であることは素晴らしいことだし、私はなにも、苦手を克服して家庭菜園を始めよと強いるつもりは一切ないのでご安心ください。
ただ、声を大にして言いたいことがあって、それは、
「わるいけど私も相当、虫が苦手ですよ」ということ。
しかし私が「私も苦手なんですよ〜」と言おうものなら、今度はほぼ全員が「いやいやいや、私の場合は本当に、本ぉー当に、ぜったい無理なんです」と「どっちが虫ムリ合戦」になりそうな返事が返ってきて、こんなに嫌われる虫がかわいそうにも思えたりするから我ながら勝手なもんです。
(ちなみに「虫」という総称も大きすぎる主語ではあるのですが、今回は、考え方の話なので、あえてこのままの呼び方でいきたいと思います)
全ては理解からはじまる
よく小さいお子さんが無邪気に虫と戯れたりしますが、私の場合は残念ながら、幼稚園の頃からすでに虫が怖くてたまらず、アリが足に登ってきたことに、この世の終わりのごとく泣き叫ぶような子でした。原因はたぶん、虫の世界を描いた絵本で、懸命に生きる主人公の虫に自分を重ねたトラウマだと思っています。
じゃあ大人になって克服できたのか、と聞かれれば、お恥ずかしながら全く克服できた気はしていません。むしろ、苦手と知られたらわざと虫を見せてくるタイプの人もいるはず、とか、こちらの恐怖も想像せずにからかう人もいるわ、などと思って虫が苦手だということをひた隠しに生きてきました。ずいぶん人間不信な価値観だったと反省すら覚えます。
しかし、どんな人も特別扱いしないのが自然界。ここでもやはり、自然と自分とのつながりを理解することで、この世には虫がいないといけない、と理解できました。
虫がいることで実る植物があること、虫が食べることで分解される物質があること、虫を食べることで食物連鎖が繋がること。「循環」や「サステナブル」などと称される概念だって、分解していったら虫の存在にたどり着くわけです。自分の中でこうして変化した虫に対する考え方も、ちょっと遅めだけど、自分なりの成長だと思うことにしました。
戦わなくていい。自分とも、虫とも。
虫が生きる意味を頭で理解できたら、驚くべきことに、畑で虫を見かけると感謝にも似ている感情を覚え始めました。
少し前まで、自分から山や森に出掛けておきながら虫を避けていたような私が、いつの間にか、畑で蝶々を見ては「花粉を運んでくれているのかな」とか、てんとう虫がいれば「アブラムシを食べてくれてるのかも」とか、ミミズは「土中を移動して耕してくれてるんだな」なんて思って感謝したり、さらには去年よりミミズが大きくなったと喜んだりしてるのです。ミミズが大きくなったのを発見して喜ぶなんて…アリで泣いてた頃の自分に言ってもぜったい信じないし余計に泣くと思うほど信じられない変化。思考で理解したことに感覚がついてきた、という感じで、以前どこかで読んだ「知識が経験を通して知恵へと変わる」とはこのことか、と思っています。
もしかしたらハタケト読者の皆さんの中には、家庭菜園やってみたいけど虫が怖くてできずにいる、とか、農家さんから届いた野菜に青虫がいて以来買ってない、といった、虫という名の壁をつくりあげてしまってる方もいるかもしれません。そこで私のオススメは、無理に苦手を克服しようとして自分を追い詰めず、ただ共存モードに切り替えることです。
まず虫の存在意義を頭で理解するだけで「あ、共存が当たり前だな」と、共存モードの準備が整います。あとは自分が順応していけばOKです。
植えた苗が虫に食べられたら防虫ネットを掛ける、買ったキャベツに青虫がいたら庭に放つ、ハチが家に入ったら窓を開けて外に出す。共存モードは、理解の延長にある行動ですから、大丈夫、きっとできます、アリに泣いてた私にもできてるんだと思い出してください。
共存モードに立ってみると、先に畑や自然にいたのは彼らで、私たちの方があとからお邪魔してるとも言えるわけで、いきなり現れた人間からヒーヒー怖がられても、虫たちにとってみたらいい迷惑かもしれないですよね。
ただ、わたしの自宅内においてはバグズフリー空間でありたいと思っていますので(笑)これからもお互いに快適な距離感で住み分けていきたいと思うのです。
ライター/やなぎさわまどか