2021/03/04
「野菜を切る時間」で心を整える。野菜と日常を楽しむコツ。【畑の魅力伝道師 いまむらゆい】
※畑のそばの、豊かな暮らし発掘メディア「ハタケト」は、2022年9月1日より愛食メディア「aiyueyo」にリニューアルしました。
心がなんだかざわざわする。何気ないことで落ち込む。そんな心を整えたいとき、どんなことをして過ごしていますか?わたしはまず、包丁を握ります。怖い意味ではなく(笑)
包丁を握るのは、野菜を切るため。キッチンに立ってお気に入りの道具で、すっと野菜に包丁を入れます。焦らず、ゆっくり。手早く切ろうと考えずに。
野菜を切ってみては?という提案。
管理栄養士・お野菜レシピ考案家のいまむらゆいです。野菜が大好きで、いつもハタケと料理を通じて楽しんでいます。野菜を料理するときに欠かせない下ごしらえは、食べやすいように「切る」という作業。ただの作業としてではなく、わたしにとって野菜を切る時間は、心が穏やかになり、自然と笑顔になってしまう時間です。
「野菜の切り方レッスン」というものを開催し、多くの生徒さんに野菜を切る時間を楽しみに変える方法をお伝えしてきました。
そんなわたしから、心を整えたいときに「たまにはゆっくり丁寧に野菜を切ってみては?」という提案です。
忙しい日常生活の中では「野菜を切る時間が苦痛。面倒くさい」と感じることもあるかもしれません。苦手であれば、スライサーなどを使ってもいいのですが、包丁使いは少しのコツを知るだけで簡単に感じて楽しいものです。
野菜愛の強いわたしが思う包丁を使うときの一番のポイントは、野菜が切られていることに気が付かないような包丁使いをすること。包丁で優しくすっと切られた野菜もきっと喜んでくれているはず。
今回はそんなヒントになればと、包丁使いの大切なポイントと切った野菜に合わせたおすすめレシピをご紹介します。
ハタケと料理がつながる醍醐味
先日、仲良しの農家さんの畑にふらっと立ち寄ったとき、「大根あるから持ってけよ!」とその場でハタケから引っこ抜いて、土付きの大根をいただきました。
冬のハタケから飛び出した大根は、ずっと持っていると手がかじかんでしまうほど冷たい。寒さに耐えてここまで大きくなったんだなと知ると、料理しているときにハタケの風景を思い出し、野菜への感謝がより溢れ出します。これがわたしにとってのハタケと繋がる料理の醍醐味。
冬が旬の大根は、切り方次第で味わいが大きく変わる野菜で、切る楽しみを発見するためにはもってこいの野菜です。
今日はどう切る?
心が落ち込んだり、なんとなく元気が出ないとき、自分が丁寧に切った野菜を見ると、それだけで自分を褒めてあげたくなります。
特に一人暮らしをしていると、自分のためだけに料理をする機会が多いですよね。そんな時でも、自分のために野菜を丁寧に切るということを楽しめれば、料理へのやる気も上がりますよ。
今回お伝えしたいのは、多くの切り方の中でも、「拍子木切り」(ひょうしぎきり)という切り方です。野菜スティックのような形で、1cm幅で細長く切っていきます。シンプルな切り方で見た目も揃いやすい。自分を褒めてあげたいときにおすすめの切り方です。
心穏やかに切るコツ。まずは基本姿勢から。
(基本姿勢と臨月のお腹。)
まずは、包丁を持つときの姿勢作りから。足は肩幅に開いて、包丁を持つ手と同じ側の足を斜め後ろ45度に引いて立ちます。
包丁の持ち方は、親指と人差し指で刃元を挟んで、残りの三本指で優しく柄を包むように。
野菜に対して包丁を60度の角度で構えて、前に滑らせるようにして刃を入れていきます。
力を入れずに、包丁の重みでスーッと包丁が入るように。(野菜が切られていることに気づかないくらいに)
丁寧に包丁を入れると、切った断面もきれいで輝いて見えます。力を入れないことで、トントントンという音もほとんど立ちません。(野菜にも負荷がかからないから、きっと野菜も喜んでくれているはず。)
野菜の切り方ミニレッスン〈拍子木切り〉
基本の姿勢が整ったら、大根を拍子木切りにしていきます。
5cm幅の輪切りにした大根の断面を真上に向け、端から1cm幅で包丁を入れていきます。
板状になった大根をさらに繊維に沿うように1cm幅で切ります。
1cm角の拍子木切りができました。拍子木切りは、ある程度の太さがあることと、繊維に沿って斬られているので、ほくっと感とシャキッと感が両方楽しめる切り方です。
今回は皮付きのまま切っていますが、お好みで皮を剥いてくださいね。
〈レシピ〉大根と豚肉のしょうが炒め煮
大根を拍子木切りで料理に使う機会は、あまり多くないのでは?いつもの料理でも、切り方が変わるだけで、見た目も食感も大きく変わってきます。
拍子木切りの大根のおすすめレシピは、ずばり「炒め煮」!炒め物と煮物の間のような炒め煮は、拍子木切りによく合う調理方法です。今回は豚肉と合わせてしょうがの炒め煮にしてみました。
【材料】(2〜3人分)
大根 5cm幅
豚薄切り肉 200g
しょうが 1かけ
塩胡椒 少々
ごま油 大さじ1
(A)酒・みりん・醤油 各大さじ2
(A)水 100ml
すりごま・青ネギ 適量
【作り方】
①大根は拍子木切り、しょうがは千切りにする。豚肉に塩胡椒を振っておく。
②フライパンにごま油と切った大根を入れ、中火で軽く焼き目をつけるように3分程度炒める。
③豚肉としょうがを加え、肉に8割程度火が通ったら(A)を加えてフタをし10分加熱する。
④フタをとり、残りの水分を飛ばすように炒めて皿に盛り、仕上げにすりごまと青ネギをかける。
【ポイント】
・大根に軽く焼き目をつけることで、香ばしく仕上がります。
大根料理といえば、半月切りやいちょう切りになりがち。ぜひ拍子木切りで、一味違った料理も楽しんでみてくださいね。
少しの瞬間でも自分にはなまるを。
心が落ち着かない時は、自分のことを蔑ろにしがち。わたし自身も周りにアンテナを張りすぎて、自分自身を責めてしまいそうになるときがあります。
日常の中で少しの瞬間でも、自分のしていることに集中する時間、丁寧に過ごす時間があると今の自分に向き合ってあげられるような気がします。
その心を整える時間のひとつとして、「野菜を丁寧に切る時間」を提案させていただきました。野菜を切る時間を心穏やかに、自分にはなまるをあげられる時間にしてみてくださいね。
ライター/いまむらゆい